「分かってない。」、「センスがない。」と
思われてしまうことの損について書きましたが、
わざとマイナス・アピールするオーディショナーは(恐らく)いないでしょう。
なのになぜそんな感想を持たれてしまうケースが多いのか。
僕自身、オーディションを「受ける」側を30年以上続けていて(もちろん現在もです)、
「見る」側の経験も20年近くになり、
自分が両方の立場で業界の選考に参加するようになり
少しずつ、でもはっきりと分かってきたことがあります。
誰だって面接では自分を良く思われたい。当然です。
自分を出す難しさ。
それは自身のコンプレックス、欠点(だと自分で思っているところ)は
隠さないとマイナスに働いてしまうだろう恐れがあるからです。
僕自身がそれに囚われ気にし過ぎていました。
正確に言うと、気に仕方を間違えていて、
良く思われたい、の「良く」が何を指しているのかを見失っていました。
せっかくのチャンスを何度も棒に振ってきましたが、
今ならなぜ駄目だったかが分かります。
自分が失敗した後悔を無駄にしたくない。
オーディション対策、自己PR講座のレッスンを、時間外でも相談されれば
1対1でも長時間やっているのはその気持ちからで、
だからこそレッスンへのパワーが出ます。
自分を良く見せよう。見せたくないところは隠そう。
それが意識の一番前に出てしまい、結局少しも自分らしさを見せられない。
卒なく、当たり障り無くまとめてしまったり、
素材としての自分を提示しなければならないのに、作り込み過ぎて失敗する・・・・・
若い頃の自分の宣材写真(宣伝材料の写真、プロフィールに使用するもの)を見ると
少しでも自分の目を大きく見開いて、顔を左右対称に見せようとし、
小顔に見せる努力までして(苦笑)
自分を整えて見せよう見せようとしていた自分がいます。
・・・・・そういうキャラクターが似合い、
売りになっている人は他に沢山いるのに・・・・・
自分らしくない何者かに見えたい、見せようとしてたのですね僕は。
それで個性を押し隠し自分らしい自分から程遠くなっていた。
結局何者にも見えていなかった。
演技表現についても、クセを封じ込めることに気を取られ過ぎて
ほどほどにまとめがちの平均点テイクを連発していたと思います。
結果、何を求められて自分がオーディションに呼ばれたのか、
皆目分かっていないことを盛大にバラしていたようなものです。
その時々はオーディションを仕事に結び付けたくてただ必死だっただけだけど
今振り返ると恥ずかしいです。自分の無知と無理解が。
だからといってふてぶてしく開き直れば良いというものでもない。
自分らしさを等身大で「認める」ことと「出す」ことの難しさは一生の課題です。
俳優に自意識は必要不可欠。それを味方につけるか敵に回すか。
どちらにせよ自分の中に存在するものだけに厄介です。
俳優に限らず自分のメンタルともっと上手く付き合いたいと願う人は沢山いるでしょう。
僕自身がそうだったように、演技レッスンを受けることで
自分の傾向や幅を認め、前よりも楽に自分自身でいられるようになってほしい。
自己PR(面接)講座では
各個人の現在に合わせて、相手の知りたいこと見たいことを整理して
それぞれの、盛らない、間引きもしない自己紹介とやり取りを探っていきます。
演技実技のレッスンでは
クセを抑えることと個性を殺すことの違いを各ケースごとに具体的に比較。
行きたくない方向の表現にブレた時の自分の持っていき方のパターンを紹介、
実践してみることで「私らしい出し方」を選べることを目指してレッスンしています。
演技の喜びを探求する、俳優・声優養成所「ヴォイス&アクターズ道場」