演技の喜びを探求する、俳優・声優養成所「ヴォイス&アクターズ道場」

スタートは質より量(田島恵美子)

私は2020年8月に入門しました。
それ迄、読者モデル、バラエティー等仕事絡みで出演した位で、
養成所には通っていましたが、
発声なしで聞いているだけという事もありました。

ですので、道場のレッスンの指摘も、
何がなんだかわからない状態からスタートしました。

ただ、台本について、「一字一句、句読点、まちがえないで」と
数カ月間、厳しく指摘され
短いセリフも助詞、言葉が纏まらない、
イントネーション等でやり直し・・・宿題も多く、
正直、何で・・・と思っていました。
ただ、私自身も仕事で似たことを言う時があったので、
土台なのだと思いながらも、
前日、徹夜で練習して当日に臨むという泥縄状態でした。
アフレコに至っては、未経験とはいえ、
全くもって絵とあわずお話にならないレベルでした。


一体どうなるのかと思いながら、打たれ強い性格が幸いしてか、
「1年間、仕事で遅刻はしても欠席はしない」という低レベルな目標を決め、
何とかなるだろうと思いながら通っていました。
そして、慣れてきた頃、先輩の皆さんが、誰も通る道だから・・・と言って、
アドバイスを下さり、今でも親切にして頂き感謝しています。


私は、演劇では、役の人物を深く掘り下げていける人間力
(喜怒哀楽を様々に表現する知性、教養、想像力等)と同時に、
それを表現できる高度なスキルが必要だと感じています。

そのスキルを向上させるには、的確な指導と量をこなすことだと思います。

なんだかんだ言っても、最初は練習量が多い人にはかなわないです。
エネルギーが違うのです。

「質」は主観の問題ですが、
「量」は多いものは多いという事実がありますし、
どこかで必ず質に転換する時がきます。
量が質に転換しても量をこなすのが超一流だと思います。

そういう点では、祐一さんは日本語を、
音、技術として指導して下さるのが新鮮で、
具体的で理論がわかりやすいです。
私はおかげで、テレビの仕事関係者から
仕事で使用している日本語がきれいになったと言われています。


あるドラマの台本を読む機会があり、
ドラマをみるとアドリブだと思っていた内容が台本と一字一句違わず、
綺麗な日本語で正確に台詞を自然に見える佇まいで表現している
プロの凄さをあらためて感じています。


今、初期のメモを懐かしく読み返しています。
そして、「努力は時々嘘をつくけど裏切らない」と自分に言い聞かせながら、
芝居は台詞だけでなく様々なところから矢が飛んでくることを
その後のレッスン、夏の特別レッスンで学ぶことになります。
それは、また、お話する機会があると思います。




【主宰からひとこと】
勇気を出して飛び込んでくれた意気に応えたくて、厳しくし過ぎたと
後で反省した回もありました。いろいろな場面を鮮明に覚えています。
良いレッスンが出来ているのかどうか、私自身いつも不安で振り返ると
もっとああ言えばこうすればばかりです。

夢見ることに条件はないはずなのに、演技レッスンを受けるのに
そもそも年齢制限が付きまとうことも多い世の中で、
それはベルトコンベアー式のカリキュラムに受講者を当てはめる為。
いわばレッスンする側の理屈。

年齢制限なしで希望者を受け入れる演技レッスンは
カリキュラムが子役向けのアレンジだったり、ボリュームが少なく
簡単に出来ることに終始、または演技表現の上澄みだけをすくうような
難度の極端に低い内容のものが多いです。

簡単にタレント気分だけ味わいたい人向けの内容、
それはそれで需要と供給の双方が満足なら、
存在価値があるし私がとやかく言うことではありませんが、
もっと、自分を変えたい、変わりたいと思っている方に、
その方のテンポに(なるべく)合わせた個人指導のレッスンが出来たらと
手応えない内容のレッスンに私自身出会う度にずっと考えていました。
ただやみくもに厳しくするのではなく、その方その方の目的を把握し、
状態を見ながら加減を変えてレッスン対応していく。
大手の大人数、決まったカリキュラムに全員を当てはめて
ただ「こなす」ようなレッスンではなく、
少人数でたっぷりの時間で繰り返しもう1回、
もう1回と違う表現を試して失敗してまた試す中から
いつの間にか自分らしさを自覚して、
感情が湧き出し吐露が表現に結び付いていく・・・
そんな時間を毎週必ず過ごせる場を作りたいとずっと思ってきました。

それはルーティーンをさらうレッスンとは
同じ「レッスン」という言葉では括れないほど違う、
実に神経が疲れる時間なのですが、恐れずに挑戦してくれた方々の表現が
確かに変化していくのを見るのは限りない喜びです。
毎回のレッスンがレアケースと感じているからこそ喜びも大きいです。
今日、良いレッスンが出来るかどうかは私にとっていつも冒険です。
自分を変えるのは簡単なことだけやるわけにはいかない道のりですが、
演じる冒険を楽しんでもらえたらこんなに嬉しいことはありません。

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