演技の喜びを探求する、俳優・声優養成所「ヴォイス&アクターズ道場」

5:自己紹介の作戦 2


新人に限らず、僕自身が受けるオーディションでも
寄席の噺家さんのマクラのごとく、クリスマスの時期なら
「クリスマスで思い出すのは・・・」、
バレンタインの前後なら
「バレンタインといえば・・・」と
自己紹介を始める方はよくいます。私もその一人です。

自分の前、前の前、前の前の前の方と同じエピソードで
自己紹介を始めてしまった方たちと私との違いって何だろう・・・
私の場合だと、誰かが自分と被る話題やネタをやったら急遽内容を差し替えます。
誰だってそうすべきと思うでしょうが、これがなかなか難しい。
次がすぐ自分の番だったらあっという間に順番が来てしまい、
しどろもどろになりがちです
(そういう体験も私自身いっぱいして来ました)。

最初、自己紹介分を考える時、作文形式で私は考えます(それ自体苦手ですが・汗)。
音読して1分間になる自己紹介文をまず書いてみてください。
無理に1分に納めることは大事ではありません。
かといって短過ぎても何を言いたいのか分からない内容になりがちですので、
最低1分の目安で書いてみます。
やると分かるのですが、一つ二つの話題で引っ張って引っ張って
何とか1分間の展開になりがちです。
作文していてそうなのですから、これが何も持たず人前で同内容を話そうとすると
「あの~、その~、えっと・・・」が多く入ってきます(慣れなければ当然です)。
延びちゃいます。

1分間前後の自己紹介を求められることが業界では一番頻度が高いです。
1分前後でとスタッフから云われて1分越えてもそこで制止されることはまずありませんが、
謀らずも長引く自己紹介はほとんどの場合、本人にとって損です。

逆に上手いなぁと感じる自己紹介は実際には1分半~2分を越えていても短く感じます。
体感時間の不思議ですが、
自己紹介慣れをしていくことで話している自分と聞いている側の
感覚が合致していくことは可能です。

自己紹介の焦点の合わなさ、肝心な話題の欠如、余分な言葉の頻度や傾向は
いくら録音機器で録ってもなかなかセルフ・チェック出来ません。
聞き返すだけでも一苦労ですし、どうしてもそこに主観が入るからです。
客観性の獲得には「読める」状態でのチェックをお勧めします。

まずは作文風、日記風、エッセイ風などなるべく書きやすいスタイルで始めてみます。
最初は箇条書きで結構です。
・出身地について
・なぜ演技したいと思い始めたか
・実際に演技を始めたきっかけ
・思い出の役
・悔しかった思い出
・今後の夢
などなど、まずは話題を書き出してみます。

1分の自己紹介でも4つは話題が変わるのを目指すのが良いと思います。
一話題15秒目安。やってみると分かりますが、30秒で伝えられる内容を
15秒に短縮することは練習次第で可能です。
本番では緊張して「あの、その」が入っても20秒以内で抑える。
人前で1分フリートークするのも慣れなければ苦痛ですが、
15秒ごとに区切って考えれば、電車で次の駅に着く間にでも
シミュレーションしやすくなります。
各話題について、5秒しかないとしたら、一番言いたいことは自ずと見えてきます。
その言葉をどう修飾するか、
15秒で言えることは想像するより豊富にあるものです(つづきます)。