演技の喜びを探求する、俳優・声優養成所「ヴォイス&アクターズ道場」

新たなるスタート(高屋恭平) 2020年5月25日

ひとつの山を越えたという事だろうか。いや まだ小さな丘かもしれない。
兎にも角にも、宣言明けは、街も人も 動き出す。
皆がはやる気持ちを抑えきれず飛び出すだろう。
しかし、ここまでの辛抱の中、ある者は最愛の人を失い、
ある者は職場を追われ、若者は一度きりの青春の一里塚を奪われた。
彼らの無念を思うと、
今の我々は夢ゆめ調子に乗ってはいけないと思う。
これからを真剣に考えねばと思う。

これからの時間、演じられる境遇にある事を
しみじみと幸せに感じずにはいられない。
俳優は演じてナンボだ
俳優が舞台上で語り、動く事は何よりも胸高鳴り 心踊る一瞬だ。
私はかつて別役実氏から舞台には長い間
観客の視線に晒されて目に見えない空間の癖の様な物が生まれ
その為 舞台には上手から下手に ゆるやかな風が吹いている事を教わった
つまり、上手から下手へは、風に従うから順路で、
その逆は風に逆らうから逆路であり、
舞台空間は登場人物がそこに入りこむ事で始めて息づくものだと。
それから後、これらの微妙な空間のニュアンスを感じ取れた時、
私は 初めて舞台人の入り口に立てた事を実感したのである。
今 ようやく、下手七三あたりで誰かに呼ばれ
ゆっくり振り返る行為のダイナミックさ
演劇的快感を味わえる その日が近い事を確信している。

ただ、まだまだ 気は緩められない。
つるかめ つるかめ!

*下手七三 (舞台を十等分して下手より三分
上手より七分した所)

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